臓物遊戯

　ジャスティンは薬で眠らせ、ベッドに拘束した男の腹に耳を当て、しばしその内臓が働く音に耳を傾けてから、やおら愛用のナイフを握りしめると男の腹に突き立てて真一文字に引き、腹を切り開いた。腹膜をめくりあげる時彼は、何か秘密の洞窟で宝箱を開ける少年のような胸の高まりを覚えた。

　ぱっかりと口を開いた肉の裂け目からこぼれ落ちる臓物は色鮮やかで、よく熟れたザクロの粒のように、豊潤に煌めいてた。それはまるで宝物であり、そしてごちそうであり、彼にとってはその両方であった。

　彼は大きく開いた腹の穴に顔を埋め、湯気立つような内臓の熱気と、馥郁たる香気を愉しんだ。しばし、ご馳走を前にした者のように目と鼻の楽しみを満喫すると、ジャスティンは腹の中に両手を突っ込み、手一杯に腸を掴んでぬめるのも構わずずるずると引っ張り出した。そしてベッドにぶちまけて、その上を泥遊びをする幼児のように、ごろごろと転げ回った。ぷるぷるとしたはらわたのベッドは心地よかった。裸で血と粘液にまみれて、彼はまさに生まれたままの姿となった。彼は愉快さに笑い声を上げた。

　犠牲者の内臓に次第に熱を覚えたジャスティンは、抜き取った臓器の中からずっしりと重い大腸を掴み出すと、それを己の陰茎に巻き付け、盛んにこすり立てた。ぬらぬらとした感触が容赦なく彼を追い立てる。こりこりとした、固さのある中身の感触もまた官能的であった。この犠牲者は少々便秘気味だったのかもしれない。ぼんやりと彼はそう思った。

　この一風変わった行為も彼にとってはすでに、ありふれた性の行為であった。大腸の中から攻めるのも、外から攻めるのも、受ける快楽に大した違いはないことを彼は知っていた。ジャスティンはどちらもお気に入りだったが、余人は知らないであろう後者の行為は、より彼を興奮させた。

　程なく彼は達し、黄ばんだ白い粘液が真っ赤に染まったシーツやピンク色にテラテラ光る内臓、象牙色に輝く肋骨の上に降り注いだ。素晴らしい瞬間だった。孤独感、惨劇への渇望、性の妄想、全てが満たされた至福の瞬間。この時がいつまでも続けばいい。彼は心の底からそう願った。

　行為を終えると、疲労したジャスティンは血塗れのシーツに丸くなって眠り込んだ。腹を裂かれた男の傍らに横たわる姿は、まるで男の腹から生まれた赤子のようにも見えた。背を丸めて身を固くする様は、生まれることを拒んでいたのに引きずり出された胎児であるかのようだった。だとしたら、程なく彼は息絶えることができるはずなのだ。犠牲者達のためにも彼のためにも、本当にそうであったなら、どんなに良かったことだろう！
（了）

後書き△

　ダーマーの臓器遊び話をジャスティンに転化してみました。ダーマーの伝記を書いた作家のブライアン・マスターズ氏はダーマーの性癖や殺人に至った理由について「奴は生の内臓萌え〜だったんだよ！」説を採用してますが、迷惑な萌えもあったもんですなあ。

　マスターズ氏によるダーマーの伝記は、ニルセンのとはまた違って文学的感興も無く、ただただひたすら、孤独な人間が暗黒面にはまり込んで滅々と腐っていく様をじっくり、じっとりと見せつけられる、これまた鬱な読書体験を約束してくれる、とても嫌な良書だと思います。何だか言葉がおかしいですが、そこらへんの意味をくんで下さると嬉しいです。これを読むと「人間、ホントに一人っきりじゃろくなことにならんな」と、ともすれば引きこもりがちな自分に危機感を覚えることができます。そんな意味では引きこもりの方に激しくオススメです。反面教師として。例としては極端すぎますが。

　某ミクシィを見てたら、ＥＣをきっかけにダーマー関連の本を読み漁ったというのが自分だけじゃないと分かって安心しました。