ジェイの元にやってきた次の日の晩、わたしは彼から白い服を手渡された。広げてみるとそれは、滑らかな手触りをした男性用のパジャマだった。
「毎晩裸で寝かせるわけにもいかないから」とジェイは説明した。
そう言えば昨日は奴隷小屋でも寝室でも、わたし達はずっと全裸で寝ていたのだった。しかしいくら熱帯に近い地といえどもう十一月、季節は冬にさしかかろうとしていた。
「ありがとう、寝る時に着替えさせてもらうよ」
受け取ってベッドに置いて来ようとするわたしを、彼は制止した。
「羽織るだけでいいから、今着てみてくれない？サイズが合わないかもしれないし」
それもそうだと、わたしは今着ている、少し大きめのTシャツ（これも彼から借りた服だ）の上からパジャマの上着を羽織ってみた。
それは明らかに、わたしには大きすぎた。首元から鎖骨が丸出しになり、肩幅も手足の長さも全く合わず、手を下げると袖はわたしの手指の第二関節を覆ってしまっていた。それは、父とまではいかないが、兄の服を羽織って己の体格の矮小さを思い知らされている幼児の如き、無様な姿だった。
「わたしにはちょっと大きすぎるみたいだね」
かすかな気まずさを苦笑で紛らわせて、彼を振り返った。わたしの姿に、彼も笑っているに違いなかった。
あに図らんや、ブカブカの服に着られているわたしの姿を、彼は目を輝かせて見つめていた。いつも青白い頬に、薄く赤みがさしているのはわたしの気のせいだろうか？その、何かに感動しているような表情にわたしは軽く嫌な予感を覚えた。
「できれば、もう少し小さいサイズに替えて欲しいんだが？」
わたしの催促に、クローゼットに探しに踵を返すジェイが呟いた言葉を、わたしは聞き逃さなかった。
「…似合うのに」
わたしはその呟きを聞き流すことに決め込んだ。クローゼットの中身をひっくり返した挙句、替えの寝間着が見つからなかったという彼の報告を受けるまでは。
（了）
台所で怪我してチューッ、相合ジュースに続きまして、古来より伝えられし伝説のシチュ「彼氏のパジャマ借りて着てみたら、大きすぎてブカブカ☆そんなプチっぽさが強調されたちゃわゆい姿に彼氏もクラッ★」に、アンドリュー＆ジェイの二人で挑戦しました。ただし、この二人の場合は衣服を提供されるのも、より小柄なのも、攻のアンドリューの方でありますが。
一人称のアンドリューパートとはどうしても温度差がでますが、ジェイもちゃんと、アンドリューに萌え萌えしてると思ってます。そして彼らの身長差について、アンドリューはジェイの方が「少しばかり背が高い」と言ってますが、これこそ一人称マジック（書かれていること＝真実とは限らない）というやつで、実は相当ジェイの方が高いんじゃ…などと妄想を膨らましているところです。だって、元はかなり体格良かったらしいルークにも「背が高い」って言われてるもんな、ジェイ。
彼ら、この時点では双方、自分が攻（＝相手を可愛がる方）だと思ってるんではないかととらえてますがどうでしょうか。勝手なイメージですが、それぞれ「可愛い」と言われたら…ジェイは眉をひそめて困惑＆警戒し、アンドリューは仏頂面で嫌がりそうです。
この後アンドリューが、ジェイのキュンキュンした視線を浴びながら件のパジャマで寝たか、Tシャツのまま寝たかはご想像にお任せしたく候。
2006年9月7日