アンドリューは獅子のレリーフの下の席に腰をかけた。そこは酒場の喧騒を見渡せる、彼のお気に入りの場所だった。そこでラガービールを飲みながら、獲物を物色するのが彼の日課だった。
ここでは誰もが狩人であり、同時に獲物であった。互いに貪るために、狩人たちは欲望むき出しの視線で獲物を狙っていた。どの狩人も、貪るほどに渇く類の欲望が目の奥で燃え盛っていた。
一晩の快楽以外は求めることのない不毛な狩り。アンドリューはいささか飽き飽きしながらも、狩りを止められずにいた。結局去ることになる相手の後ろ姿を見るのはひどい苦痛だったが、さりとて独りでい続けることはそれ以上に恐ろしいことだった。
本当は一晩だけでなく、ずっと一緒にいてくれる仲間がほしい。それだけが彼の願いだった。しかし、高いプライドが邪魔をして、誰にもその願いを打ち明けることはできなかった。
床下の友となる相手だけでなく、安全なまま夜を過ごす相手ももちろんいた。その夜、アンドリューは少し幸せになれた。
しかし、そうした相手も早晩、彼のもとを去ってしまうのだ。そうなった時、彼はかえってひどい孤独を味わうことになるのだった。
もはや、アンドリューはひと夜の相手に快楽以外を期待するのをやめていた。彼には快楽と酩酊と殺人に焼き切れた神経しか残されてはいなかった。狩りを続けるも地獄、止めるのも地獄の血塗られた道を歩くしかなかった。この彷徨はいつ終わるのだろうか？彼にもわからなかった。
目を上げると、一人の青年と目が合った。青年は少し考えたように視線を外すと、意を決したように声をかけてきた。今夜の獲物となるのは、果たしてどちらだろうか？
（了）
アンドリューのモデル・ニルセンが獲物探しに使っていた酒場「ゴールデンライオン」にちなみまして、アンドリューの獲物探し話を。とはいっても「声をかけるのはいつも相手」とアンドリューが言ってるので、アンドリューから声をかけさせることができませんが。アンドリュー…誘い受け？（違）
作中では最強攻め様なアンドリューですが、美形だし時には受扱いされることもあったんじゃないかなーとか妄想たくましくしてしまうところです。リバ万歳。サムはアンドリューのこと掘る気だったのだろうか…。
そして、彼に友達ができないのは超絶高いプライドのせいだと思う次第。彼視点の文章読んでてもツィーンと鼻につくって凄すぎる。同志とはいえ、ジェイはよくつきあえるなあ…。
2009年4月14日