いつものようにシーツに埋もれてのらくらとしていたわたしに寄り添っていたジェイは、おもむろにわたしのシャツをまくりあげると、下腹をむんずとつかんだ。
そこには、この家に招待された当時には確かになかったはずの、脂肪の層がかすかに、しかし明らかにふっくらと形成されていた。ジェイはわたしの少し出た腹をつまみながら、無言で非難めいた視線をわたしに向けた。
わたしはため息をついた。わたしの身にもなってほしい。長年の牢獄暮らしから一転しての、ここしばらくの美食三昧に怠惰な日々を思えば、多少なりとも太らない方がおかしいとわかるはずだ。
弁解する余地もなく、窮したわたしはキスでごまかすことに決め込んだ。そして彼の口の中に囁いた。
「君が悪いんだよ、ジェイ」
「僕が？」
心外そうなジェイにわたしは続けた。
「そうだよ。牢でキャベツばかり餌にしていた男に、たらふくご馳走をふるまったりするからさ」
それが真実に近かった。ジェイは照れ臭そうに鼻を掻き、そっぽを向いて呟いた。
「昼には、思いきり不味いオートミールでもご馳走してあげるよ」
それはあまりありがたくない宣告だった。
（了）
牢獄暮らしの痩せこけた男が、ジェイのご馳走に連日舌鼓打ってたらそりゃ少しは太るよなあ、と思いまして。
2009年4月7日