暗く深まる秋、そして近づく乾いた冬の気配を窓の外に感じながら、若いライサンダー・バーンは自分で自分の杯にジンを注いで乾杯した。彼には共に仮装して練り歩くような友はいなかったので、こうして独りハロウィーンを祝っているのだった。
一緒に行く友人がいれば、彼はこの夜、スワンプに行きたいと思っていた（独りで夜のスワンプに行くほど彼は馬鹿ではなかった）。彼の伝説的な大叔父の小屋の跡地、十五人の少年が惨殺された現場へ。この失われた魂の彷徨い出るという日、そこでは無惨な姿をさらす少年達の霊に出逢えるかもしれなかった。彼は是非とも、大叔父が大きなナイフ一本で殺害、解体した少年達をこの目で見てみたかった。
それより何より、その小屋の主人である大叔父に会えるかもしれないのだ！その考えはジェイをワクワクさせた。昔は―そして今も彼の孤独の一因であり、少なからず恨むこともあった先祖ではあったが、今はもっとも近しい存在に感じていた。もし会えたなら、彼は大叔父に聞きたいことが山ほどあった。罪を問い質すための質問ではなく、共感した意見を分かち合うための質問が。少年達を殺して切り刻むのは、バラバラに解体するのはどんな気分だったのだろう？楽しかった？興奮して勃起した？
大叔父はきっと誰にも理解されることなく死の刑に赴いたのだろう。しかし今なら、そして自分ならその一片でも分かってあげられるとジェイは思った。十五人には及ばないながらも、経験はそれなりに積んでいる自分ならば。大叔父に出逢えたなら、二人で夜通し語り明かしたかった。殺人のもたらす高揚感や、少年の中身を見ることの喜びを分かち合いたかった。大叔父ならきっと分かってくれると彼は信じていた。
だが頭の別の部分では、今夜であろうといつだろうと、スワンプに行ったところで何も出やしないことは分かっていた。でなけれが今この部屋に、先程殺されたばかりの犠牲者―お菓子と引き替えに命を奪われたあどけない迷子―の霊がいるはずなのだから。しかし今、肌寒さと血臭と薬臭い酒の後味以外に彼は何も感じてはいなかった。殺人後特有のどんよりした疲れも含め。
彼には何もないのだ。友達も、頼れる先達の霊も、少年達の霊も。部屋に散乱する死体と酒の他は何も。だからせいぜいそれを楽しむことに決め込んだ。彼はすでに幼くみずみずしい肢体をバラバラにし、その新鮮な臓物を、カラフルなリコリスのようにベッドの上に散らしていた。噛み千切って呑み込んだ小さな睾丸は、彼のための素敵なお菓子と言えないこともなかった。そうやって幼子の甘い死を味わいながら彼は思った。大叔父もこの暗い夜を独り、こんな風に愉しんで過ごしたのだろうか？
（了）
後書き
ハロウィーンのジェイ。大叔父さんとも絡めたくて、こうなりました。あんな惨劇のあった場所じゃ、恐怖スポットとしてある意味人気になってるんじゃなかろうか。特にハロウィーンの夜は。でも子孫は行かないか。
2008年10月30日