蒼白な顔をして戸を開けたジェイは、輝く白い台座にするりと腰をかけた。その下腹部の内側に力を集中すると、ほどなく、彼の中で捩れるような流れが発生し、何らかの大きな移動が起こり始めた。それは激甚な、彼の全身に震えをもたらす程の勢いのある大移動だった。そのうねりがもたらす苦痛に、彼は軽く呻いた。
その勢いは彼の体内を轟音を立てて駆け抜け蹂躙し、ひたすらに出口の一点を目指していた。ようやく最終地点に到着すると、普段はぴっちりと閉じられた、その隙間を力ずくでこじ開けるようにして身を乗り出し、ついに己を自由の身とした。とめどない解放の瞬間。彼は一瞬放心した。
彼の出口から脱出を果たし、水面に受け止められたそれは、黒々として太く長く、こんもりと積もった排泄物だった。愛情を込めて摂取され、彼の体内で様々な化学変化を経て、丹念に醸造されたばかりの、新鮮で温かな、少年達の残滓。解放されたのは彼だったのか、それともこの異物の方か？ともあれ彼は、苦痛から解き放たれたことに安堵した。
彼は重ねた薄い紙で己の出口を拭うと、水中に放り込み、レバーを捻った。大きな水音と共にそれらは全て押し流され、すぐにその姿は見えなくなった。こうしてジェイは別れを告げた。彼の肉と成り果てた、少年の残りカスと。そして少年達の一部も解放された。食人鬼の体内という、温かくも無慈悲な牢獄から。
（了）
…というわけで、ジェイの脱糞話でした。作中ではトイレについての描写があっても「ジェイたんは美形だからウ○コなんかしません！」アピールをヒシヒシと感じる無機質ぶりでしたが、入れれば出るのが自然の摂理故に。
実際、ジェイは、彼の肉となり損ねた少年達の部分がこうして出て行ってしまうことに対して、どう思っていたのやら。そこらへんが書かれてないかと興味深く読んでましたが、作中では明らかにならず大変残念。想像するに…彼は、自分の中に残った、肉になった部分にしか興味がないのやもしれません。
出した物を肥料に家庭菜園とか作って、その野菜を食べてたら、愛すべき少年達の肉を、余すところなく取り込んだことになりませんかね。そうすると、肉の愛を追究するとエコロジーに辿り着くと。うーん考えさせられますなぁ。…少しだけ。
2006年12月26日