念願の品が揃った喜びに、ジェイは黒い祭壇の前で笑みを浮かべた。ついに、美しい頭蓋骨が六つ揃ったのだ。それは、慎重な吟味の末選ばれた頭骨だった。
人はよく死を絵画化する際に、どんな者も骨だけになればどれも同じ様なものであることを示し、死は全てに平等であることを訴えんとする。
しかし彼は、骨には骨の、また個別の美しさがあることを知っていた。美しい屍とそうでないものには、埋めがたい落差があった。死においてすら人間は平等ではあり得ないことを、その特異な経験から彼は理解していた。
その美しい頭蓋骨が六つ揃ったことは、彼にとって特別の意味があった。それは知識によるものではなかった。彼に金色の髪と淡い青の瞳を与えた民族の、血の記憶のなせるわざなのだろうか？頭部にその人間の力の凝縮を認め、切り取られた頭部を格別に尊重していた、古い古い祖先達。
そしてその民族はまた、三という数字をも意義あるものとしていた。三柱の神、三本の柱、三個の頭。その神聖な数が二倍になれば、更に強力になることを彼は願っていた（三倍にしなかったのは、彼自身の数理に基づくというよりも、現実的な理由によるのが大きかった）。
その素晴らしい贄を特別にあつらえた黒い祭壇に並べ、彼は蝋燭に火を灯した。彼は跪き、力持つ何某かに、敬虔に祈りを捧げた。
いつの日か、生きて共にいてくれる友達ができますように、と。
後書き
お題は、『彼の口はニガヨモギの味がする』や、LSのアーケイディやゴーストから。でも作品はＥＣ。
これまたダー○ーの、頭蓋骨で神殿作り話からネタを拝借。彼は実現はしなかったようですが。
ジェイを勝手にケルト人の末裔にしてますが、ニューオーリンズの旧家生まれということは、先祖はフランス系移民である可能性があり、フランスってことは陸のケルト人とドルイド教のメッカだったガリアだよね〜というテキトーな類推によります。…スペイン系移民だったらどうしよう。でも、ママンのペルノー好きも、一族がフランス系なことの傍証かとも思ってみたり。フランス人がよく飲むお酒だそうで。
そしてオチは、そんな陰惨な手段で叶えたい願いがそれかよ！とズッコケル感じを目指しましたが、それはそれで切実な気もしてきました。結局、後にアンドリューと出会えたので、願いは叶ったようで結果オーライ？←えー
2007年1月26日