魂△

ジョー・オートンの魂は混乱し、暗闇を彷徨っていた。
彼は自由になったはずだった。肉体という枷から解き放たれて、何処へも飛び立てるはずだった。
恋人によって、その頭に何度もハンマーを振り下ろされた晩から。

しかし彼は次の段階に飛び立つことなく、地上を漂っていた。
彼は空虚だった。失われているのは愛だろうか？彼にも分からなかった。
何かを求め、しかし何を求めているかも分からずに、彼は己が住処にしがみついていた。

そんな彼に、そのぐるぐると低迷する状況の突破口と成りうる存在が認識された。
彼の家に入り込み、新たな住居と決め込んだ若者たちが。
彼らの身体を借りれば、彼が得られなかった物を得られるかも知れない。
もし彼らから得ることができなければ、次を探せば良いだけのことだ。

彼は意を決し、全身を若者の一人の内部に滑り込ませた。
彼の胸にぽっかりとした穴を空けさせた、中絶された愛を今度こそ完遂させるために。

後書き

お題は、ポピーＺ作品のそこかしこから。作品は『Entertaning Mr.Orton』より。
実はいまいちよく分かってない作品なのですが、恋人に殺された男の魂が、その家に新たにやってきたカップルの一方に乗り移る話だったかと。それでやりたいことがあるのかもしれませんが、カップルにはイイ迷惑であります。

2007年2月18日