ある夜の寝物語に、わたしはジェイに脱獄の手口を、一度死んで蘇った顛末を語って聞かせた。眠気が勝っていたのか、彼は余り驚かなかった。むしろわたしの話に喜んでいるようであった。
「それじゃあ、君は僕のために蘇ったラザロというわけだね」と彼は言った。
それは、神の子の命により死と腐敗の中から蘇った貧しい者の名だった。
そして彼は、自分も似たようなものだとわたしに打ち明けた。わたしと出会って、これまで土深く埋葬されていたのを掘り出され、救い出されたような気分だと。
もしくは、これまで冷たく世を眺めるだけだった彫像だったのが、命を吹き込まれ、台座を降りて世間に触れ始めたような気分だと。だとすると、今の彼は命を得たピュグマリオンの彫像というわけだった。
それにしても、腐敗しかかりながら蘇った病者と、神技を傾けて造られた像とでは、同じく新生した二人の、なんというイメージの相違だろう？
後書き
お題は『カルカッタ』やＳＭＭ、ＬＨより。作品はＥＣ。
アンドリューと出会ってからのジェイの生まれ変わりぶりを見れば、新生したのはアンドリューだけじゃないのだなーと思いまして。
2007年3月3日