ジェイはベッドの端に腰掛けてラム酒を呷りながら、アンドリューが浮浪者の身体を切り開いているのを眺めていた。その貧相でみすぼらしい外見に反し、その中身は豊潤で煌びやかであった。その眺めはいつも通り彼を楽しませた。
しかし今ジェイは、かつて少年達を切り開いたような、衝動的な殺意や切実さな欲求を覚えていない自分をぼんやりと感じていた。もはや自分の中に殺戮への意志はないのだろうか？だとしたら、それはアンドリューがいてくれて孤独でなくなったためだろうか？
恐らく、そうなのだろう。彼が少年達を殺害したのは、共にいてもらうため、自分の孤独を埋めるためなのだから。拷問も肉食も、一体化の幻想を強化する手段にすぎず、ことさら残虐さを求めてのことではなかった。
彼はアンドリューと話をしていて、彼もそうなのではないかと薄々思っていた。彼も、孤独でなくなるために死体と共に眠っていたのではないかと。ならば、二人ともにあればこれ以上殺す必要もないはずだった。二人にはお互いがいるのだから。
しかし、彼の求めに応じて、今こうして彼らは殺戮に身を委ねていた。そして、アンドリューはもちろんのこと、彼もまたそれなりに楽しんでしまっていた。どうやら、自分は孤独抜きで、人間の内部の美しさを楽しめる怪物であったらしかった。別に不満があるわけではなかったが。
そして別に責める気はなかったが、愛も孤独も美も求めることなく、ただただ殺人を楽しむアンドリューが、自分とはまた異なる怪物にも見えてしまうのも、また確かであった。
後書き
お題はＬＳから。でも作品はＥＣ。
しかしＥＣが出版拒否されたりでスッタモンダしたのは、シリアルキラー二人が怪物でなく人間だからではないでしょうか。怪物キャラなら、ファンタジー補正がかかって「まー怪物だからいっか」となる残虐行為も、人間が人間に平然とする、というのがマズかったんではないかと。
いかに中身が人間離れしてぶっ飛んでいようと、やはり人間は人間ですから。…アンドリューは一回死んだのに復活する、規格外人間ですが。
2007年2月6日