ジャスティンには、どうしても欲しい物があった。
彼はもはや死体では満足できなかった。彼には、生きた従順な奴隷が欲しかった。死体では得られない温かさや鼓動がどうしても必要だった。しかし、活きた人間に大抵付随する自由意志は必要なかった。むしろ、邪魔だとすら言えた。だから、彼は生きた人間を愛することができなかった。
どうすれば、身体は生きて、しかし意志のない、肉人形のような人間を得ることがでできるだろうか？それだけが彼の関心事だった。彼は思案を重ねた。そこで、一つの試案を思いついた。人間の内面を破壊することができれば、自分の欲しい物は手に入るかも知れない、と。そのための方法は知らなかったが、願いを叶えるためならば何でもするつもりだった。たとえ、どのようなことでも。
彼はそのアイデアを試みた。彼は引き込んで拘束した青年相手に、考えつくだけの精神的な拷問を科した。目の前で解体した人間の屍肉のみを糧食として与え、蝿と腐肉の散乱するベッドに眠らせ、切断され保存されていた頭部への口づけを強要した。これまでの犠牲者の詳細な解体写真を、その青年の未来予想図であるかのように示しもした。他にもなにがしかの苦痛を与え続けたことにより、元より脆弱らしかった青年の精神の均衡が失われるのにさしたる時間はかからなかった。
理性の破壊には成功したのか、青年はジャスティンに抵抗することはなくなった。彼の働きかけに反応することもやめた。青年は己の精神の檻に自ら閉じこもり、出て来ようとしなくなった。彼は自らを守るための狂気に陥ったのだ。しかし、その無反応さはかえって、自我の防御の固さを感じさせた。これではジャスティンの望む従順さとはほど遠いと言わざるを得ない。
ジャスティンは失望して溜息をついた。これでは自我を放棄している分、死体の方がまだましだった。彼は重いドリルを取りだし、持ち上げた。この失敗作を、新たな屍に作りかえるために。
後書き
お題はＥＣやＳＭＭ。作品もＳＭＭ。
これのシリアルキラー話と支配欲はがっちりと繋がりがあるかと。
彼ら、殺人鬼キャラ達の殺人欲求の中に、支配欲がかなりの割合で含まれるのでしょうし。
2007年2月8日