ライブの終わったセイクリッド・ユーの喧噪をかき分け、大男が二人店の中にでんと場所を取った。それはジラー達と分かれて店内に入った二人の吸血鬼・モロカイとトウィッグであった。
黒い子ども達に囲まれて、彼らはご機嫌だった。彼らは今宵の宴を楽しんでいた。田舎町の小さなライブではあったが、彼らはその熱気や律動をそれなりに楽しんでいた。彼らは昼間の険悪な事件も忘れかけて、ほろ酔いに身を任せていた。
彼らは持参した酒を飲み終え、新たに飲物を頼もうとカウンターに目をやったが、背の高い人の良さそうな店長は、大勢の子ども達を相手に大忙しの体であった。モロカイは舌打ちして、ポケットのキャンディを口に放り込んで噛み砕いた。
他に店員は居ないかと頭を巡らしたトウィッグの目に、冷蔵庫の前に屈み込む人影が映った。その人影は冷蔵庫からバドワイザーを出したところだった。彼はその人影に声をかけようとしたが、その声は発されることなく立ち消えた。
それというのも、立ち上がったその人影があまりに細くどこまでも長く、背丈で言えば彼らよりも大きかったためであった。二人の目は、その背に釘付けとなった。トウィッグは細い目を見開き、モロカイは丸い目をますます丸くして驚いたように、その細長い立ち姿を見つめていた。彼らは、このような人物には、この15年というものお目にかかっていなかった。旧い仲間に逢い、そして別れたあの日からずっと。
その人物は、ぽかんと口を開けている彼らに背を向けたまま、ビール缶を持って歩み去った。その後ろ姿、背を伸ばして歩く様は、15年前に見たものと全く変わっていなかった。それは、彼らがはるばる探し求めていたまさにその人物であった。
まさか、本当に？なぜ、彼がここに？そんな疑問を抱くより、彼らは単純にこの偶然を喜んだ。トウィッグは、ニューオーリンズまで行く労力とガソリン代が浮いたことを、モロカイは、仲間との再会のパーティーがすぐに開けることを。
後書き
お題はポピーＺ作品のそこかしこから。作品はＬＳ。
モロカイ＆トウィッグがクリッシーを見つけるまで。こんな感じじゃないかと。
2007年2月25日