ロスト・ソウルズ （原題 LOST SOULS）△
原作者・ポピー・Z・ブライト 訳・柿沼 瑛子 角川ホラー文庫 1995年8月 定価800円（現在絶版）
●あらすじ
「母親の肉体を引き裂いて生まれてきた、ヴァンパイアの血を引く美しい少年。
つきまとう孤独を埋めるために、彼は魂を揺さぶるパンク・バンド『ロスト・ソウルズ？』のメンバーが住む
ミッシング・マイルを目指す。そして、さすらいのうちに出会った、緑の瞳の酷薄な青年ジラーに血と官能を教えられ、
心奪われてしまう。−享楽の夜々。その果てにもたらされた恐るべき真実とは…。
精神と肉体の境界を越えた濃密な愛を描く耽美ホラー。」（裏表紙の文丸写し）
◆感想＆紹介
ホントにもう、何と書いていいか分からんくらいに好きな小説です。雰囲気もキャラ造形もびっちりした構成の絶妙さも全てが魅力的で。
クリッシーらーぶ！（おちつけ）
…落ち着きました。えーでは解説おば。 舞台は1980年代半ばのアメリカのニューオーリンズ＆架空の地・ノースカロライナ州ミッシングマイルで、吸血鬼の血を引いた少年の、自分探しの旅とその成長を描いています。ビルドゥングスロマンと言うには、成長の方向が暗黒面ではありますが。
物語の進行と共に、主役の少年だけでなく、周囲の人々の物語もうねり、絡み合い、そしてまたそれぞれの終着点に収束していく様に、目が離せなくなって行くのです。スティーブ＆ゴーストの危うい友情の行方は？！クリスチャンが孤独でなくなる日は来るのか？！甘党吸血鬼・モロカイは虫歯にならないのか？！（すこぶるどうでもいい）
作中にはドラッグやバイセクシャルや近親相姦その他モロモロのデンジャラスな要素がドカドカ入っていて、かなり読む人選ぶとは思いますが…そして実際買った当時（16歳）、私の感想も「ウゲ」でしたけれど…
そんな自堕落な環境の中でも、いや だからこそ？癒されない孤独、空しさを抱えた魂同士の交情がグッくるのです！危険な要素も、こんな形でしか親密さを分かち合えない悲しさ交じりで、決してエグさでウケ狙っただけのものではないと思います。多分。
吸血鬼を、人間を脅かす怪物であると同時に、絶望的な孤独を抱えた哀れな存在としても描いていて、吸血鬼文学としても見るべき所の多い作品と思われます。
◆キャラ紹介だかなんだか
ナッシング：あえて主人公挙げるとすれば彼でしょう。青い瞳に黒く染めた髪（地毛は金茶色）の、 ヴァンパイアの血を引く美少年。黒いレインコート常備。裕福な人間の家庭で育てられながらも違和感を持ちつづけ、自分の本当の居場所を求めて旅に出るのです。生活態度はスサみまくりながらも、根は素直で優しいコなトコもポイント。守られる美少年（芯は強いけど）好きなアナタへ。
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ジラー：主人公ではないでしょうが、良くも悪くもこの作品を代表する人物。緑の瞳の絶世の美青年。でも…金茶色の髪を緑と紫と黄色に分けて染め、紫のスカーフでポニーテールに結び、爪には黒いマニキュアを塗り、乳頭ピアスで靴はピンクのスニーカーなセンスに私は付いて行けない。カッコイイのかそれは。生活が荒んでるのはもちろんですが、性格もかなり荒廃しまくってます。「緑の眼の怪物」にふさわしく、嫉妬心もものすごく。 ナッシングを守ってんだか独占してんだかは微妙なトコロ。退廃と嗜虐と独占欲が具現化したかのようなキャラクター。サディスティックな攻美青年好きなおぬしへ。
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クリスチャン：上記のあらすじには全く出てきませんが、重要人物。黒髪黒目で背の高い美中年（他にいい表現方法ないものか）。常に黒ずくめ。職業：バーテンダー。時により花屋も。生活態度も性格も、この作品のキャラの中ではかなり真面目かつ良心的な方です。定職あるあたりがすでに。 子供好きで（…違う意味もこもってますが）優しいし。 優しく繊細で、かつ憂いをおびた保護者チック中年好きなそなたへ。クリスちゃんではない。
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ジェシー：ヴァンパイアに憧れる少女。自分を餌食にしてくれるヴァンパイアを求めて、夜な夜なクリスチャンのバーを訪れるのです。こんな言い方だと彼女の方が化け物みたいですが。願いは…叶ったんだかそうでもないんだか。詳しくは読んでのお楽しみですが、ジェシー×クリッシーは基本だと思います！（好きにせよ）。同じくヴァンパイアに憧れる乙女達へ？
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スティーブ＆ゴースト：バンド「ロスト・ソウルズ？」のメンバー。どっちも主要キャラで、個性違うのにいっしょくたにしてスマン。どうも二人セットな印象が強くて。この二人の強い友情も、この作品のポイントの一つであります。多分。ハッキリズッパリよか友情以上愛情未満ってのが絶対燃えるのよぅ！！というおまいさんへ。
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モロカイ＆トウィッグ：ジラーの子分達。この二人はホントに二人セットなので気は咎めない。 見た目が「違う画家に描かれた二枚の同じ人物の絵」だったりミョーにチャンネルつながってたり。本文で「二人合わせて一人分の脳みそしかない」とありますが、一人分もない気が（禁句）。 モロカイの甘党っぷりもイチイチ楽しい。グロテスクな中にも笑いを求める汝へ。
文章作成日：2000年