神曲迷言・迷句集

個人的に「えー」と思ったり、突っ込みたくなった文章をピックアップ。


地獄篇第34歌

頭が粗雑な人には私がどこをどう通り抜けたか見当がつかないはずだ。

悪魔大王の体を伝って、地獄を脱出した時の文章。このあたりの文章はややこしくて、頭が粗雑な私にはよくわからず。トホリ。


煉獄篇第11歌

「君が年老いてから肉体を捨てようが、『パン』とか『チン』とかいっただけで若死にしようが、千年の後に君の名声に変わりがあるとでも思うのか?その千年の歳月も永遠に比べれば短いものだ。天をゆったりとめぐる軌道に比べればたかがまばたき一つだ。」

高慢を反省する亡霊・オデリージの台詞。とはいえ、これを書いたダンテ自身は、千年後の世界を確実に変えた(であろう)と思うので、この語は迷言とせざるをえない。たとえ宇宙全体から見たら一瞬のことでも、「神曲」が書かれたことにはそれだけの価値があると思うのです。だからダンテが若死にしなくてよかったなあと。


地獄篇第13歌

〜と私が思ったと先生が思ったと私はいま思っている。(平川訳)

 「omott-」が三連続で出る、ちょっとひどい訳文だと、私はいま思っている…。平川訳は他のところは良いのに、なぜここだけこんな文章…。
ちなみに他の訳では「〜と私が思いこんだ、と師は思ったらしい」(寿岳訳)「〜と、私が思い込んでいるのだと、先生は思ったに違いない」(岡戸訳)「〜とでも私が思っていると、師は想像しているらしく思われた」(野上訳)…と、比較的自然な文章になってます。やはりなぜだ平川訳。もしかしてわざとか?(2009年1月13日)


煉獄篇第17歌

「困っている人が助けを乞うまで手を拱いている人は実はもともと助ける気がない意地悪な人たちだ」

天使についてのヴィルギリウスの説明より。えー、求められるまでは助けを押しつけないのも親切じゃないのか?もしかして、ダンテの苦労人生が言わせた「助けて欲しいって言わなくても助けてよウワァアアン」という心の叫びなのかも。まあ、天使について言ったセリフであって人間に適用できるものではないのかも。


地獄篇第29歌

「おまえの爪がいつまでも長くのびておまえの役に立つように祈るから」

体が痒くてたまらなくなる地獄にいる亡者への、ヴィルギリウスの一言。苦痛が和らぐようには祈れない(神の摂理に反するので)とはいえ、あんまりだという気も。

2008年8月25日